1991年に、シマノの創業70周年のタイミングで財団法人シマノ・サイクル開発センターを設立しその翌年にこの財団が博物館をオープン。
博物館を設立したシマノの2代目社長は、生まれ育った地元・堺への恩返しの気持ちと、自転車文化をもっと広げたいという願いを込めて博物館をオープン。
「自転車の歴史」と「堺と自転車の関係」にスポットを当て、堺と世界の架け橋になってほしいという想いも込められている。
展示スペースは1階、2階、4階の3フロアで、エントランスである1階はミュージアムスクエア。
2階は3つのゾーンに分かれたメイン展示室で、Aゾーンのパノラマシアターでは自転車の始祖であるドライジーネから始まって現在の型になるまでの自転車の歴史ムービー「発明家たちの夢」を上映している。
Bゾーンはカテゴリーごとの自転車と最新のロードバイクの3200点の分解展示をみることができる。Cゾーンでは未来の社会に向けて暮らしに貢献するこれからの自転車の役割を紹介している。
4階は自転車に関する書籍や情報が集積されているマルチメディアライブラリーのほか、レーシングコンポーネンツの展示もあって、こちらも人気だ。
大仙公園の東・南端には「自転車ひろば」があり、自転車の乗り方教室や安全教室、三輪車や四輪車などのクラシック自転車のレプリカ体験試乗など、自転車に乗って楽しんでもらう活動がされている。
企画・運営しているイベントには、「こども絵画コンクール」や、世の中の役に立つ自転車の企画書を子どもたちに書いてもらう「こんな自転車欲しかってん!コンテスト」といったものも。
どちらも長年続いていて、いずれも自転車文化を広めるために未来を担う子どもたちに向けた企画だ。
また、「自転車散歩」や「健康サイクリング」などの大人向けのイベントも開催している。
お話を聞かせてくれた学芸員の神保 正彦さんは、シマノの商品企画に長年携わってきたレジェンド。
「自転車というのは自分の力で思うがままに、行きたい場所に好きなペースで行ける乗り物です。英語では二輪車の意味の『bicycle』、ドイツでは進む車輪という意味の『Fahrrad』など、機能的な名前が付けられていますが、日本では自ら転がす乗り物という意味で『自転車』です。人と道具の関係性が刷り込まれた素晴らしい名前だと思います。科学技術が進化して、快適な乗り物がどんどん登場しますが『あると人生が豊かになる』。それが自転車の大切な役割だと思います」
と話してくれた。
博物館には学校の社会科見学や遠足のほか、親子連れや自転車好き、海外からの観光で堺に来た人も訪れるそう。
子どもたちにもわかりやすい展示を意識されていて、実際に触れることで自転車の歴史を知り、未来を考えるきっかけにもなる博物館だ。