昭和56年創業の中華料理店。
長崎ちゃんぽんと皿うどんの老舗チェーン、中央軒からのれん分けされた店だ。
店主の長畑春男さんは、地元長崎の中学を出てすぐに同郷の縁から中央軒に就職。昭和38年、卒業式のわずか5日後には、乗合バスで大阪に出てきたのだという。
自由に使えるお金は少なく、朝から深夜まで働いて、休みは月に2日。「しんどいと思ったけど、田舎には帰れん。なんとか自分で一人前にならなあかん。僕の世代はそれが当たり前やった」と当時を振り返る。
がむしゃらに働いて18年。自分の店を持ちたいと決心した時、当時の社長は「頑張って店を大きくしてくれたのはお前らやから、のれん料はいらん」と、言ってくれたのだという。
そして店名は、自身の名前から1文字とって「春(シュン) 中央軒」となった。
下働きの時代から、料理への探究心を絶えず持ち続けていたという春男さん。美味しいラーメンの噂を聞けば、少ない給料の中で食べに行って味の秘密を探ったり、どうすれば玉ねぎが早く剥けるかを試行錯誤したりしていたという。
創業時から変わらないという壁のメニュー表。そこには名物の皿うどんや、鉄鍋で提供される長崎ちゃんぽんをはじめ、食欲をそそられるメニューがならぶ。お昼時には近くで働く人たちで賑わい、酢豚定食や焼きそばが日替わりランチで提供される。夜には飲みに来る人も多く、焼き豚や餃子も人気なのだとか。
餃子の担当は、妻の美代子さん。美代子さんも春男さんと同じように田舎を出て難波で働いていた時に2人は出会ったのだという。
2人の夫婦漫才のようなやりとりを見ながら餃子をいただくと、その甘みとジューシーさに驚いた。独特の甘さの秘密は玉ねぎだ。さらに味噌ベースのタレも特徴的で、本店で使われていたものに改良を加えたもの。10種類の調味料がブレンドされた濃厚なタレは、それだけ分けて欲しいと言ってくる人もいるほどだとか。
昔からの常連さんの息子、そしてさらにその息子、というように世代を超えて通っているお客さんもいるという。噂を聞きつけて紹介でやってくる人や、遠方からの問い合わせもあるそうで、その人気がうかがい知れる。
どこかほっとするお店の雰囲気と長畑さん夫婦の人柄、そして定番ながらも研究が重ねられた料理の数々に魅せられたファンは多い。
ぜひ一度、自慢の料理の数々を味わいに行ってほしい。