--> 郷田商店 - 堺ゴールデンゾーン-古いとこも新しいとこも面白い-

お店紹介

郷田商店

関西の食文化を支える堺の手仕事、手すき昆布専門店

創業は昭和21年、戦後すぐのことだった。現在の社長、郷田光伸さんで3代目。
心斎橋にあった古い昆布屋さんで職人として働いていた祖父が戦後に独立して堺でこの店を始めたという。
手すき昆布の特徴は、表面を包丁で削るため、昆布の白い部分と黒い部分の白黒削り分けられるところだ。白い昆布を作れるというのが最大の個性である。
まっすぐの刃で削り出される帯状のものが『おぼろ昆布』、ぎざぎざの刃で糸状に削り出されるのが『とろろ昆布』。
この削り出す技術は、堺の刃物があってこそ為せる技術で、特注の堺製の刃物を使っている。

2階の加工場に足を踏み入れると、甘酸っぱい匂いが充満していて、なんともお腹が空く。
井戸のようなところに継ぎ足し継ぎ足しのお酢が入っていて、そこには昆布のエキスが染み出している。これを使わないと美味しくならないのだとか。
このお酢に北海道道南産の昆布をひたし、しっとりした状態のまま削る加工に入る。
昆布を削ることができる職人は現在4人。キャリア60年のベテランの職人もいる。
この削る工程は体験することもできるが、初めての人は5分できたらいいほうだという、とても「しんどい」作業だ。
昆布を削る専用の刃物は、刃の先を職人が作業に入る前に曲げるのだという。
壁にかかっている様々な大きさの板は、表面を削り終わって白い部分だけが残った白板昆布を切る時の型で、お寿司屋さんがバッテラ寿司に使う昆布用。
注文を受けるお寿司屋さんごとに大きさが異なり、それぞれお店の名前が入っている。

堺の手すきおぼろ昆布は伝統産業で、その始まりは江戸後期から末期。
最盛期である大正から昭和初期にかけては、この辺りに140軒から150軒ほど手すき昆布の店が軒を連ねていたのだという。
そんな中で、郷田商店は比較的まだ新しい創業だったのだとか。そんな昆布店も、今では6社。手すきでの製法は3社しかない。
社長にこれからのことを聞くと、「表面を削り出したおぼろ昆布を使う昆布うどんも、削り終わった芯の部分を使うバッテラ寿司も、関西の食文化ですよね。こういう食文化を担っているのが堺の手加工なので、守って続けていきたい。堺でこういう手仕事をしているから、大阪でこういう食べ物があるんだということを知ってもらって、興味を持って食べてもらいたいですね」と話されていた。
大阪の食文化を支え、継承していく堺の手仕事である手すき昆布。その手仕事をぜひ味わってもらいたい。

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